恋を知らない人魚姫。



しばらくして運ばれて来たオムライス。

好みが一緒じゃないと言っても、何から何まで正反対というわけでもない。
オムライスはむしろ好きな方。

愛海と櫻井くんの会話に耳を傾けながら、スプーンで端から口に運ぶ。

嬉しそうに愛海が話すのは、担任の先生の話やクラスのことで、あたしには入っていけない話題。
一見仲間外れにされているみたいだけど、櫻井くんと話したくないあたしはこの方が助かる。

愛海もきっとそれを分かって話してくれている。
そう思ったあたしは何の遠慮もせず、食べることに集中していた。



食べ始めてから、たぶん30分くらい。

白いお皿に横たわっていたオムライスは、全てあたしの胃の中に収まって。
斜め前のハンバーグが乗っていたプレートの上も、綺麗になくなっていた。

だけど、

「……もう無理かも」

カタンと小さな音を立て、お皿の上にスプーンを置いた愛海。
そのお皿の上には、まだ三分の一ほど残ってる。