その言葉に櫻井くんは、安心したような表情を浮かべ、

「なら良いんだけど……。今日、可愛いね」

愛海に向かってニコッと笑いかけた。

「あっ、えっ!?」

対する愛海は目を真ん丸にして、一瞬で顔を紅く染める。
そして、俯きがちな小さな声で「ありがとう」と、応えた。


……何なの、これ。

まるで付き合いたての恋人みたいなやり取り。

見てられなくて、あたしは顔を背ける……けど、


「月城さんも。今日も可愛いよ」


櫻井くんは、あたしにも同じ言葉をかけてきた。

「えっ……」

その発言に驚いたあたしは、思わず彼へと目を向ける。

でも、すぐに後悔したのは……それが罠だって分かったから。

小さく変わる彼の表情。

全身の血が引いていくような、嫌な予感が走る。

そして、


「今日はこっちで待ってたんだ」


彼はにっこりと笑って、あたしに言った。