「……何?」

「いえっ」

声をかけられて、慌てて視線を下に戻す。胸の鼓動はさっきよりも重く、騒がしい。

今度こそバーコードを読み取って、

「来週の月曜までに返却して下さい」

分厚いその本を差し出した。


だけど、

「……」

あたしの手は一向に軽くならない。


な、何……?

そっともう一度顔を上げると、


「天恭さんから聞いた?」


天恭……それは、愛海の苗字。


「聞いたって、何を……ですか?」

よく分からない笑顔を浮かべる櫻井くんに、緊張しながら聞き返す。

すると、

「俺のことを、天恭さんが好きだってこと」

さらりと、まるで何でもないことのように答えた彼。


え……。

当たり前に驚いて、言葉を失う。

だけど櫻井くんは、何か楽しんでいるような様子で。

「何でって顔してるね。大丈夫、付き合ってはないから」

カウンターに手をつき、身を乗り出して、顔を近付けた。

そして、