あたしの耳に届いたのは低い声。

「え……?」

慌てて顔を向けると、眉間にしわを寄せ、複雑そうな表情を浮かべる愛海がいた。

そして、あたしと目を合わせた愛海は、「ごめん!」と勢いよく頭を下げた。

「変な意味じゃないの。ただ、たっくんが海憂のことを好きになったりしたら困るから……」

思い詰めた様子で言われた言葉。
対してあたしはキョトンとする。

櫻井くんが好きになる……?
それって、このポニーテールで?

「……あはは、有り得ない!それならどう見たって愛海の方が可愛いよ」

あたしは思わず笑った。

だけど愛海は表情を和らげることなく、ブンブンと首を横に振って、

「馬鹿なこと言ってるのは分かってる。でも、今日だけはオシャレしないで欲しいの」

ワンピースの脇腹の部分を掴んで、すがるように言ってきた。