恋を知らない人魚姫。


久しぶりの再会。
それは、予想もしない最悪な形になった。

恥ずかしい……なんてものじゃない。

あたしは声も出さずに、荷物を取って教室を出ようとする……けど、

「っ!」

「逃げなくてもいいじゃん」

扉の前に立った櫻井くん。
にっこりと笑って、通せんぼする。

何で……。

「何でよりによってあなたなのよ……」

穴があったら入りたい。
熱くてどうしようもない顔を、彼から背け言う。すると、

「ふーん。じゃあ、他の人に聞いて欲しかった?」

あっけらかんとした声で、降ってきた問いかけ。

顔を向けていないから、彼の表情は分からない。
でも、あたしのことをからかって、にやけてる姿は簡単に想像出来た。

「……笑いたいなら笑えば」

「笑う?何で?」

「こんな所で歌ってるなんておかしいでしょ」

変に遠慮される方が嫌。
からかうのなら、思いっきり笑って馬鹿にして欲しい。