恋を知らない人魚姫。


目の前の席が誰のものとか、あたしは知らない。

クラスメートは確かにあたしを受け入れてくれないけど、あたしだってクラスメートのことを受け入れていない。

だってあたしは、愛海さえ傍にいてくれたらそれでいいから。
他の人なんて必要ない。


でも、どんなにあたしがそう思っても、進学先を同じにしても、ずっと一緒にはいられなくて。

愛海はいつか必ず離れてく。

その時、この教室よりも遥かに広い世界で、あたしはひとりぼっち……。


ほんの少し想像した。
それだけで胸の奥が苦しくなった。

いつもの賑やかな教室は嫌い。
なのに、物音ひとつしない教室は静かすぎて……不安で。

日が沈むのと同じく、ゆっくり襲いかかってくる孤独感。

「っ……」

あたしは溜まらず、大きく息を吸い込んだ。

そして吐き出したのは、

切ない恋の歌――。