放課後。
「……女子と上手くいってないの?」
空調が効いて、教室とは比べものにならないくらい涼しい部屋。
少し肌寒いとさえ思える職員室で、担任の先生は声を潜ませ言った。
先週から行われている進路指導。
順番は出席番号順で、“月城”という名字のあたしは、本来ならばもうとっくに終わっている。
それが最後に延ばされたのは、こういう話がしたかったからって、分かっていた。
でも、分かっているからって、答えたくなるわけじゃない。
「進路指導じゃないんですか?」
「っ……」
あたしが聞き返すと、先生は一度バツの悪そうな顔をして、
「そ、そう、進路指導ね」
誤魔化すみたいに机の上へと目を移した。
こういうのが一番うっとおしい。
深く踏み込む勇気なんてないくせに、中途半端に心配してくるの。
それもあたしのことを思っての心配じゃない。
学校側として、クラスを受け持つ担任として、“いじめ”があっては困るから……。
その言葉を言ってこないのが、何よりの証拠。



