心配と言わんばかりの表情を浮かべながら、愛海が黙って従った理由は分かってる。

もうひとりの図書委員の子と、あたしが仲良くなれれば……って、そういうこと。


だけど、実際は――。


……ほら、いない。

教室内に図書委員の子の姿は、もう既にない。

先に行ってる……なんて、そんなことあるはずなくて。

授業が終わるなり、友達と何かボソボソと話していた彼女が、サボって帰ってしまったのは明らか。

あたしは小さくため息をついた後、机の上に置いていた学生鞄を持ち上げて、教室を後にした。



向かった先は、もちろん図書室。

扉を開けると、空気は随分冷たくて。
鼻をかすめるのは、独特な本の印刷の匂い。


一番好きなのは愛海の隣だけど、静かなこの空間も……好き。


だから、普段何かを進んでやろうとはしないあたしだけど、図書委員だけは手を挙げて立候補した。

……もうひとりの女子は、完全にジャンケンの負けだったけど。