良かった……。
あたしは小さく胸を撫で下ろす。
あれから、愛海が遊びに誘ったあの日から一週間近く、櫻井くんはあたしの前に現れていない。
電話が鳴ることも、メールが届くこともなくて不審に思ったけど、愛海から聞く彼の様子はいつも通りで、特に変わった様子はない。
彼があたしに近付いて来ないのなら、それはそれで好都合……なのだけど、何だか不気味だし、それに……
顔を合わせづらくなる。
スカートのポケット。
そこには、彼のくれた飴玉がまだふたつ残ってる。
ひとつはあの後、教室に戻ってから食べてしまった。
“いちごミルク”と書かれた通り、甘い甘いいちご味……。
毒でも入っていれば良かったのに。
そしたら恨むことが出来るのに……。
目的の読めない彼の行動。
あれから姿を見せないから、それは謎のままで。
時間が過ぎれば過ぎるほど、戸惑う気持ちは大きくなって。



