高校3年生。受験を控えたあたし達は、夏休みを目前に一気に慌ただしくなった。
そして、時間の経過はあっという間……。
「あっ、海憂!」
6限目が終わってからの休憩時間。
教室を出ると、愛海がいた。
同じクラスの友達だろう人と、話していた愛海。
だけど、あたしの名前を呼んだ次の瞬間には、「じゃあ、また後で」と、その子は自然と離れていって。
それにこくんと頷いた愛海は、
「一緒に体育館行こ!」
にっこりと笑って、あたしに言った。
愛海と並んで歩く廊下。
その周りには、いつもの何倍も、何十倍も人がいる。
歩く方向、向かう場所はみんな同じ。
「いよいよ夏休みだね」
嬉しそうに愛海が口にした言葉通り、明日から夏休み。
これから終業式で、全校生徒が体育館へと向かっていた。
……と、いうことは、もちろんあの人も向かってるってことで。
あたしは愛海に気付かれないように、周りをそっと確認する。
人が多すぎて分からない。それもあるかもしれないけど、あたしの目に彼の姿が止まることはなくて、どうやら近くにはいなさそう。