「え、夏休み?」
きょとんとした顔をこっちに向けるのは、櫻井くん。
「うん。受験の息抜きも兼ねてどうかな……?」
緊張した様子で、彼に問いかけるのは愛海。
そして、そんな愛海の斜め後ろに、致し方なく立っているのがあたし。
この奇妙な3人の組み合わせに、教室にいる人の視線がビシビシと突き刺さる。
話の内容が聞こえたのか、ヒソヒソと噂話をする声も聞こえる。
これもついて来たくなかった理由のひとつ。
ただ単に愛海に会いにきた時でさえ、じろじろと見られるのに、この状況を気にされないわけがない。
でも、それよりもっと嫌なことは……。
「……月城さんも一緒に?」
言葉とともに向けられた視線。
顔こそ不思議そうにしているけど、じっとあたしを見るその眼は笑ってる。
咄嗟に目を背けたあたしに代わって、愛海が「うん」とひと言頷くと、
「へぇー……」
面白がるような櫻井くんの声が、耳に届いた。



