愛海は前のめりになった体をゆっくり元に戻すと、
「いきなりふたりでなんて……さすがに誘えないよ」
さっきまでの勢いはどこに消えたのか、呟くくらいの小声で答えた。
恥ずかしそうに俯く顔は、赤く染まる。
「海憂にはホント迷惑な話だと思う。でも、告白するには、それなりのイベントが必要っていうか……。だからお願い。何でもするから、協力してくれないかな?」
再び両手を合わせて、あたしに頼む愛海。
そんな風に言われたら、どんなに嫌でも断れない。
「……いいよ」
「ホントっ!? 海憂、ありがとうっ!」
飛び上がる勢いで、愛海はあたしの手をギュッと握って。
同時に向けられたのは、嬉しそうな満面の笑顔。
愛海に手を握られてるのに、嬉しくない。
愛海が笑ってくれているのに、嬉しくない。
「それはそうと、早くしないと休憩終わっちゃうよ」
「あっ、ごめん」
あたしは愛海の手をさり気なく振りほどいて、お弁当箱の包みに手をかけた。



