恋を知らない人魚姫。


櫻井くんが心配して、そして安心したのは……きっと、愛海のこと。

櫻井くんはあたしを傷付けたい半面、愛海のことは傷つけたくないから。
だから、あんなことをしておいて、こんな態度なんだ……。

全てに納得したあたしは、

「……でも、まだ疑われてるの」

咄嗟に言葉を変えた。


今、彼に離れられるわけにはいかない。

ここで彼を挑発するようなことを言うのは危険。

『じゃあ、どうする?』

すぐに返ってきた彼の言葉は、今度はあたしを試しているようにも聞こえて。
返事することに一瞬躊躇うけど、

「放課後に図書室に呼び出すのは……もう終わりにして欲しい」

思った通りの願いを、素直に伝えた。

こんなことを言ってしまうのは、それこそ危険。
だけど愛海に見られてしまった今、放課後に図書室で会うのだけは避けたい。

それは櫻井くんだって理解してくれているはずで……。

『分かった、いいよ』

「本当っ!?」

思ったよりもすんなり貰えた返事に、あたしは相手を忘れて高い声を上げる。だけど、