すると彼が発したのは、
『どうした?何かあった?』
まるであたしを心配するみたいな言葉。
何か……って、それを一番知ってるのは櫻井くんのはず。
なのに何、知らないみたいに言っちゃってんの?
苛立ったあたしは、
「今、愛海と話してきた」
冷たい口調で返事する……けど、
『どうだった?』
返ってきた彼の返事は、相変わらず心配しているようなもの。
「とりあえず誤解は解けたけど……」
意味の分からない櫻井くんの態度。
戸惑いながらあたしがそう答えると、
『良かった』
彼は思いもしないことを口にした。
何で……“良かった”?
誤解させるようなことをしたのは櫻井くん。
それなのに“良かった”なんておかしいでしょ。
「ねぇっ……」
人を馬鹿にするのもこのくらいにしてよ……って、さっき言えなかった文句のひとつでも言ってやろうとした瞬間だった。
分かってしまった。
櫻井くんが“良かった”って言った理由。



