あの後すぐに愛海と別れて家に帰ったあたしは、自分の部屋に入るなりその場に座り込んだ。
微かな夕焼けが照らすだけの、薄暗い室内。
電気をつけることすら忘れたあたしが真っ先にしたことは、スカートのポケットからケータイを取り出すこと。
そして、
いくつか操作して、ある人の電話帳を呼び出すと、そのまま電話をかけた。
プップップッ……プルルルル、プルルルル。
耳に当たる無機質な呼び出し音。
三度目のそれが鳴り終わろうとした時だった。
『もしもし』
途切れた呼び出し音と引き換えに、聞こえた声。
電話をかけたのは自分なのに、その声にビクッとして。
『……もしもし?月城さん?』
返事をしないあたしに、相手は続けざまに名前を呼んで声をかける。
その声の主、あたしが電話をかけた相手は……
「櫻井くん」
名前を呼ばなくても分かってるけど、確認するために名前を呼んだ。



