恋を知らない人魚姫。


すぐに視線を戻すと、愛海は真っ直ぐこっちを見て、

「海憂はたっくんのこと、本当に何とも思ってないんだよね……?」

少し不安そうな表情で、そう聞いてきた。

「もちろん何とも思ってないけど……」

あたしの気持ちを探り出すような、そんな愛海の眼差しにキョトンとする。

だって、あたしが櫻井くんのことを好意的な目で見たことなんて、一度たりともなくて。
それは今朝、愛海本人にもはっきり言ったはずなのに、もう一度確かめるように聞いたりするから。

“どうして?”と言葉を続けようとした時、


「じゃあ、あたし……たっくんに告白していい?」


少し震えた愛海の声が、真正面からぶつかってきた。


「え……」

告白――?

愛海の口から出てきた言葉に、頭の中が真っ白になる。

だけど、

「海憂とたっくんが一緒にいるところ見た時ね、正直すごくショックだった。
海憂が相手でもこんな風に思うんだもん……もし、たっくんが他の人と付き合ったりしたら、もっとショックだと思う」

愛海は時折俯きながらも、自分の気持ちをしっかり言葉にして。