あたしの為に作ってくれた笑顔。
だけどその笑顔に何だかものすごくイライラして、
「――だから違うのっ!」
あたしは愛海の腕を掴んだまま、大きな声を上げた。
自分でも驚くくらい、らしくない行動。
対する愛海はもっと驚いた様子で、ひと言「え……」と、声を漏らした。
「あたしと櫻井くん、何もないの。愛海が思ってるようなことなんて何もない」
頭では何も考えてなくて。
ただ口が勝手に喋ってた。
そんなあたしを今度は真剣な目で、じっと見つめる愛海。
『じゃあどうして図書室にいたの?』と、そんな質問をぶつけられる気がして、あたしは少し焦る。
だけど、愛海がゆっくり口にした言葉は、
「本当……?」
あたしの言葉を、健気に信じようとするもので――。
さっきとは比べ物にならないくらい、鋭く胸が痛んだ。
ぐっと心臓を掴まれるような感覚に、息も止まる。
嘘に嘘を重ねて、自分が汚れきってしまっていること。
愛海の純粋すぎる心に触れて、改めて思い知った。
……それでも。



