確かに普通だったら今日は来ない。

昨日一緒にいたこと、言いふらしたのはこの人なんだから。

でも、

「来なかったら、もっととんでもないことされそうだから」

無表情であたしが言うと、櫻井くんはまた笑った。

本当によく笑う人。
でも、その笑顔は偽物だから、本心が全く見えて来ない。

あたしは隠すこともせずため息をつくと、カウンター上に鞄をトンと音を立てて置いた。そして、

「で、今日は?何を手伝えばいいの?」

目の前の櫻井くんに問いかける。

聞きたいことはいっぱいある。
だけどそれを素直に聞いた所で、彼はちゃんと答えてくれない。

分かっているから聞かない。
彼と一緒にいる中で、彼の何気ない言葉から真実を探すしかない。

「今日はね」

あたしの目を見て、櫻井くんが口を開いた……その時だった。


キィ……。


図書室内に、静かに響いた物音。
慌てて音のした方を見ると、扉がゆっくりと開いた。

そして――。