今日は取り乱したりしない。
どんな言葉をぶつけられたって、冷静を装ってみせる。
覚悟を決めるために、ひとつ深呼吸して、あたしは重たいドアをゆっくり開けた。
一歩、二歩、三歩と足を進めて……前を見る。
すると、目の前に広がっていたのは昨日と全く同じ光景。
カウンターにひとりで座る櫻井くん。
夕日が差し込む室内は、恐ろしいほど静かで他の人の気配はない。
「もう一人の図書委員は、今日も休み?」
彼の元へと歩きながら、今日は自ら声をかける。
「いや、今日は来てたよ。でもまだ体調悪そうだったから、帰らせてあげたんだ」
“優しいでしょ”と言わんばかりに、にっこりと笑う櫻井くん。
それに対して「そう」と、ひと言素っ気ない返事をすると、櫻井くんは苦笑しながら、
「さすがに今日は来ないと思った」
と、言った。