――放課後。
あたしはまたひとり、屋上にいた。
理由は昨日と同じ。時間を潰すため。
紅く染まり始めた空を見ながら、そろそろか……と、開いていた本を閉じて立ち上がる。
彼の言うことを聞くのは、不本意だ。
だけど、愛海を彼に渡さないため、あたしは出来るだけ彼を自分の元に引きとめておかなきゃならない。
だから今日もまた、言われるがまま図書室へと向かう。
それに……。
昼休みに彼が口にした言葉。
『人魚姫を助ける』っていう意味が、いまいちよく分からない。
話の流れから考えれば、人魚姫はあたしのこと。
でも、助けるって……。
頭を水中に押し込んで、溺れさせようとしているの間違いじゃないの?
とにかく、『可哀想な人魚姫』という言い方も、馬鹿にされてるようにしか思えなくて。
ただただ、悔しくて……。
あたしは図書室の扉の前に立っていた。