何で?
これは、昨日の続き……?
愛海の反応が怖くて、思わず目を背ける。
お願いだから何も気付かないで。何も……。
神様にすがるような気持ちだった。
すると、次の瞬間あたしの耳に入って来たのは、
「そんなの気にしなくていいのに」
少し照れた、愛海の声。
どうやら神様は、あたしのことを完全には見捨てていなかったみたい。
ホッとして顔を戻すと、愛海に笑いかけていた櫻井くんは、ニッと嫌な笑顔を浮かべた。
「見た?櫻井くんと天恭さん、今日も一緒にいたよね」
「付き合ってるのかなー?」と続けられた声に、下駄箱へと伸ばした手をピタッと止める。
「でも……月城さんも一緒にいたじゃん」
次に聞こえた、あたしの名前。
その声だけボソッと小さくなったけど、隠しているようで隠す気なんてないのはバレバレで。
「友達のくせして、空気読めてないよねー」
すれ違いざまに、わざとあたしに聞こえるように言って、背後を通り過ぎていった。



