梨花ちゃんは俺の胸の中で、首を横に振った。


…可愛い。


「秀人くんに嫌われちゃったのかと思って…恐かった」


「嫌うわけねーじゃん…」


「良かったっ」



上を見上げた梨花ちゃんの瞳はうっすら赤くて、潤んでいる。



ああ

ちゅうしてー。



「おつかれさまぁああ~」


その時、俺達の横を、佐野さんが何食わぬ顔で通り過ぎる。



佐野さんに見られた。



…なんか、



家族とかに見られたってーくらいの、恥ずかしさがこみ上げてくる。



「…今の人って、佐野さんだっけ?」



「え?そーだよ、よく覚えてるね」



「だっていつも秀人くんと一緒にいない?仲良いの?」



「まー…仲はいいね」



「ふーん…」



梨花ちゃんがいじけた顔をして、佐野さんの後姿を見つめていた。


あ、ヤキモチか?