「各エリアには『境界師』と呼ばれるやつらが五十から百くらいて、ローテーションを組んで交代で結界を維持している。
あとは……〈塔〉か。
エリア内の東西南北に一つずつと、エリアの中心に一つ。
エリア内で計五つの〈塔〉がある。
〈塔〉を使えば、エリア内の別の〈塔〉へ一瞬でワープできる。
これも『転送師』ってのが一つの〈塔〉につき七から十人ほどついていて、PKを使って客をワープさせるんだ。
〈塔〉は身分証を見せて金さえ払えば誰でも使えるが、中央の〈塔〉だけは違う。
〈中央塔〉は〈トランプ〉の人間しか使えないんだ。
あれは、〈トランプ〉日本支局本部と各エリアをつなぐための〈塔〉だから」
「ちょっと待って、ワープって、普通はできないんじゃないの?」
「一人分のPKでは、な。人一人をワープさせるのに、五人分以上のPKがいる。
一人では絶対に無理だ。対象をワープさせるより先に、PKの反動で体が壊れる」
「体が、壊れる?」
「そう。PKは万能じゃない。身の丈にあった使い方をしなければ、反動が起こる。
PKが暴走して、自分の体を傷つけるんだ。
心臓が破裂したやつもいれば、肝臓が真っ二つに割れたやつもいる」
聞くからに痛々しい話に、エルは思わず首を縮めた。
それ以上痛い話を聞きたくなかったので、慌てて質問をする。
「PKでできないこともあるのね。他にはなにができないの?」



