「田舎のほうは大丈夫だったの?」
「いや、田舎もかなりひどかったが、災害はそのほとんどが、人口が多く、最先端の技術の集まる都市部に集中した。
しかもそれらは、好んで研究所を潰し、研究者を水に沈め、研究資料を焼き払った」
それを聞いて、エルは目を見開いた。
世界各地で同時に様々な災害が起き、それが科学技術に関係のあるものばかりを壊していく。
そんな自然災害があるだろうか。
「なんだか、すごく人為的な感じがするわね」
「だから、『裁き』だと言われている」
ゼンはなんでもないことのように、淡々と言った。
「生き物の寿命を操るという神の領域に踏み込んだ人間に、ついに神の裁きが下ったんだと、
そう信じたやつが災害のことを〈裁きの十日間〉と呼びだして、しだいにそれが定着したんだ」
「へえ……」
「大規模な災害が十日間も続いて、高度な技術で作られた機械がほとんどすべて再生不可能なまでに壊され、全世界の、全国の、全工業都市が壊滅に追いやられた。
災害のせいで、人類の文明は大きく後退した。
災害当時の文明レベルは、五百年前――PKが世界に広まりだした頃と、ほとんど同じだったらしい」
「なんだか……意味深、ね」
ゼンは頷いた。



