「様々な動物と人間を合成して、人間の寿命を伸ばす必要条件を探り、究極的には、不老不死を実現させること。
……庄戸が獣の合成に成功して、そこに生き物の寿命を操れる可能性を見出したときから、
四百年前の科学者たちの最終目標は不老不死となった。
サイキックたちも寿命だけはどうしようもないから、それが成功したらサイキックに勝ったことになるしな」
不老不死。
死なず、老いず、永遠に生き続けること。
四百年前の科学者たちは、こぞってそれを追い求めたという。
そんなことに、はたして意味はあるのだろうか、とエルは思った。
ゼンはそこで一つ大きなあくびをして、話を続けた。
「庄戸の作った合成獣を見て、今度は人間と獣を合成させようと考えたやつは少なくなかったんだろう。
その後、誰からともなく異形を作り出すようになった」
「それが、異形の始まり……」
エルが呟くと、ゼンは頷いて、「最初に異形を作ったやつの名前は、現代に伝わっていないけどな」と言った。
「不老不死の研究は、その後三百年にわたって続けられた。
そこそこの成果はあったようだぞ。人間の寿命を七、八十年伸ばすくらいは容易になった。
いちばん長生きしたやつで、二百三歳まで生きたんだったかな。
そして……今から百年前。
そうした進歩をすべて無に帰そうとするかのような、未曾有の大災害が起こった」
「百年前……もしかして、〈裁きの十日間〉のこと?」
「そうだ。地震、洪水、津波、台風、豪雨、落雷、旱魃、土砂崩れ、地盤沈下……あらゆる自然災害が、世界中で同時多発的に発生した。
どれも規模の大きなものだ。十日間続いたそれは、都市部ほどひどい被害になった」



