だが、ゼンは首を横に振った。
「いや、ただの合成獣だ。異形は人と獣の合成だが、庄戸が作ったのは、犬と亀の合成獣だった」
なんだ、とエルは肩をすくめた。
すると、それを見たゼンが唐突に、
「おまえ、どうして科学者どもが異形を作り出すのか、知っているか」
と、尋ねる。
当然ながらそんなことは知らないエルは、黙って首を振った。
どうしてなど、考えたこともなかった。
ゼンは「だろうな」と呟くと、
今度は「では、庄戸の作った合成獣は、何年生きたと思う?ちなみに犬の寿命は十五年くらい、亀は四十年くらいだが」と言った。
問われたエルは首を傾げた。
「さあ……、間をとって、二十五、六年くらい?」
答えると、ゼンはニヤリと笑った。
「不思議なことにな、その合成獣は五十年生きたらしい」
意外な答えに、エルは目を見張った。
「犬の寿命も、亀の寿命も超えてるわね」
「ああ。おれは科学者じゃないから詳しいことはわからないが、互いの特性がうまいこと互いの欠点を補って、結果、寿命が伸びたんだそうだ。
そして、それこそが異形作りの目的だ」
それは、つまり。
「人の寿命を伸ばすこと?」
「そう」
ゼンは頷いた。



