「そうだ。そいつは力が強すぎて、よくポルターガイストを起こした。
それも、かなり大規模なものだ。
ちょっと物が浮いたり、誰もいないのに足音やノックの音がしたり、そういうレベルのものじゃない。
そいつが道路を通るだけで近くの車が誤作動を起こして事故が起きたり、そういう実害を伴うポルターガイストだ。
念じただけで台風を起こしただとか、言い伝えは数多くあるが、真偽のほどはわからない。
……そして強力すぎる力は、そいつ一人の体には収まりきらなかった」
エルはゴクリと唾を飲み込んだ。
そして、その音が思いのほか大きいことに驚いた。
いつのまにか、うるさく聞こえていた野鳥の声は聞こえなくなっていた。
「なんとなく、読めたわ」
エルは言った。
「今、PKが使える人がたくさんいるのは……」
「そう。そいつの力が周囲の人間に潜在したサイコキネシスの力を目覚めさせた。
PKに目覚めたサイキックたちが、また周囲の人間を目覚めさせて、そういうふうにして、急激なスピードでサイコキネシスの力は広まっていった。
そいつの力が発現してから、そいつが消えるまでの五年で、もともと世界中でも百か二百かしかいなかったサイキックが、一億前後にまでなったと言われている」
へえ、と相づちを打ちかけたが、聞き捨てならない言葉を聞いた気がして、エルは眉をひそめた。
「え、ちょっと待って、消えるって……」



