エルの言葉に、相楽はすこし驚いたような顔をする。


それからすぐに優しげな目元を和ませて、「それは、失礼しました」と、エルに頭を下げた。



 顔を上げた相楽は、今度は「ゼンくん」と呼びかける。



「……なんだ」



「どんな経緯であれ、どんな形であれ、人の命を奪うことは、誰もが思っているより重たいことです。

それをエルさんに背負わせることになるのだということを、あなたはよく覚えておきなさい」



 柔らかな声音で放たれた重い言葉に、ゼンが頷こうとした――そのときだ。



 家の外からバリバリと稲妻のような音がして、なにか重いものが倒れたように地が揺れた。



 慌てて家の外に出た三人が見たのは、家の前に倒れた巨木と、その上空に浮かぶ二人の人物だった。



 そのうち一人は、エルも知っている。エルのそれよりもいくぶんか明るい赤色の髪。同じ色の垂れた眼。

アレンと同じ〈トランプ〉のジャック。ウォルター・アシュクロフト。



 もう一人は、ベージュ色のスーツに身を包んだ女だった。

栗色の長い髪を風になびかせて、その紫色の双眸はまっすぐにゼンを見下ろしていた。