気がつくと、振り返ってラシェルを睨みつけていた。

その顔をひっぱたいてしまいたくなるのを、ぐっと堪えて、メオラは震える声で言った。



「どうして、あなたがそんなこと訊くの。エルマとわたしを無理にここへ連れてきたのはあなたでしょう! どうしてあなたがそんなこと訊くのよ!」



 ラシェルは答えず、ただ驚いたような顔でメオラを見ている。

それがメオラの怒りを助長させた。



「帰りたいか、ですって? そんなの当たり前じゃない! わたしもエルマも、望んでこんなところに来たわけじゃ……っ」



 その後は言葉にならなかった。

口が開くと言葉ではなく嗚咽が漏れる。

ラシェルに涙を見せたことが悔しくて、メオラは顔をそむけた。



「一つ言っておきたいんだが……」



 そう言いながら、ラシェルはメオラのほうへ足を踏みだした。



「おれは、おまえがアルに帰りたいと言うなら帰すつもりだ」



 その言葉に、メオラは目を見開いてラシェルを見た。



「え……?」



「エルマはさすがに帰してやれないが、おまえやカルなら帰してやれる。

リヒターやイロなんかは、情報が漏れるのを恐れて反対するだろうが、まあそこは、おれが説得すればいい話だ」



「……あなたは、わたしがその『情報』を口外するとは思わないの?」



「思わないな」



 きっぱりと言い切るラシェルに、メオラは訝しげな顔をして「なぜ?」と問う。