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 エルマとフシルが話している間。

リヒターは訓練場で、カルと近衛兵たちとの剣の試合を見ていた。



 はじめは近衛兵のうちの一人がカルと手合わせをしていて、その近衛兵が負けて次の挑戦者が現れ、それが負けてまた次の挑戦者が……というふうに、訓練場ではいつのまにか「カル対他の近衛兵」の試合が開催されていた。



 カルの腕は、見事、の一言に尽きた。

王城入りして二、三年ほどの近衛兵たちはもちろん、かなりの実力を誇っているラシェル付きやリヒター付きの近衛兵も次々となぎ倒し、結局は訓練場にいる近衛兵のうち誰一人としてカルに勝てなかった。



「見事だね」



 リヒターの賞賛に、近衛兵十名以上と試合をしてさすがに疲れた顔で水を飲むカルは、「こちとらカームのおっさんのとこで十年以上もしごかれてたもんでね」と、淡々と応える。



 それからにやりと笑うと、「エルマだって、ここの近衛兵二、三人相手なら勝てるんじゃないか? ま、俺には負けるけどな」と言った。



 リヒターは肩をすくめた。



「それは恐れ入るね。王城の近衛兵も、もうすこし鍛え直さなきゃな」



「だなー。ここに来て十日で、結構な人数と手合わせしたが、俺を負かしたの、一人だけだったぞ。王族を守る兵だってのに、これはマズイんじゃないか?」



 苦々しい笑みを浮かべて、リヒターは「違いないね」と応える。