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 デニズ海に臨む、ヴェルフェリア大陸最東端の大きな半島、イスラ半島。


 その端に位置する、別名を《ヴェルフィ・エンデ(世界の果て)》というその半島では、北半分をシュタイン、南半分をルイーネが支配するが、ここ二十年間は戦火が絶えなかった。


両国はしばしば婚姻という形で和平を結んだが、その和平は長続きしなかった。


二国は半島の覇権を争って戦をし、民が疲弊すると婚姻で和平を結び、数年もしない内にまた開戦するということを繰り返した。



 エルマとカルがいるのは、シュタイン南東、ルイーネとの国境にまたがる大きな森、セナの森だ。



 彼らは「アルの民」と呼ばれる流浪の民で、世界中を旅しながら、ときに狩猟をし、ときに隊商の護衛をし、ときに旅芸人のように芸をして暮らしている。


ついひと月前に大陸からシュタインに入り、ルタ街道を通って、首都シュロスの東隣の街、セナの森のあるドルフに入ってきたのだった。



 エルマとカルが野営地に到着すると、野営地に散らばっていた若者たち――薪を割る者や、剣の稽古をする者、弓矢の手入れをする者が、

みんなエルマに気づいて、作業を中断して立ち上がった。



 若者たちの内、弓矢の手入れをしていた男がエルマに駆け寄って、そばかすの点々とする顔をほころばせた。