(エルマと一緒に城へ来たもう一人は、けっこう馴染んでいるんだけどな)



 リヒターはこれから行く近衛兵舎にいる、長身の青年のことを考えた。



 エルマはきっと喜ぶだろう。

なにしろ、城に来てからの十日、一度も彼に会っていない。

エルマ付きの近衛兵として城に来た彼は、まず兵舎の生活についていろいろと覚えてもらわなくてはならなかったので、そちらにかかりっきりになってしまっていたのだ。



 それに、これからエルマが会いに行く人物は、エルマとは浅からぬ縁がある。

きっと話も弾むだろうからエルマに会わせてみようと、ラシェルに提案したのはリヒターだった。



 そのときふと、後方で扉の開く音が聞こえたので、リヒターは振り返った。

ちょうど、メオラがエルマの部屋から出てきて、リヒターたちとは反対の方向へ歩いていくところだった。

手になにか白い布のようものを抱えている。

その細い肩がどこか寂しげに見えた。



 やっぱり強引にでもメオラも連れてくるべきだっただろうかと、リヒターはすこしだけ後悔した。