「あらあらあらあら! こっちにはまた別の趣向の、かっこいい雰囲気の美人さんがいるわ! いいわね、凛として涼し気な目元が素敵ね。

なんなのこの部屋は!天国だわ! あら、あなたは緑の髪なのね。森の色、命の色だわ。素敵ね!」



 少女は半ば叫ぶように言いながら、ゆさゆさとエルマの肩を揺らす。

華奢な少女の弱々しい力など、振り払えなくもないエルマだったが、さして不快でもないのでやめておいた。



 元気な子だなあ、と苦笑しながらも、さてどうしようか、と、エルマが考えあぐねていると、助け舟は部屋の外からやって来た。



「リーラ、挨拶もなしに失礼だろう」



 そう言いながら入って来たのは、にこにこと微笑みを浮かべたリヒターだ。



「子ども扱いしないでくださる?」

と言って、少女はリヒターを軽く睨みつけると、すぐに笑顔になってエルマとメオラに向き直った。



 そして上品な仕草で胸に右手を添えると、背筋を伸ばしたまま腰を曲げて、美しい礼をした。



「申し遅れました。あたくし、リーラ・セルディークと申します。このシュタインの第一王女ですわ」



 エルマも慌てて胸に手を当て、礼を返した。



「お初にお目にかかります。わたしはルドリア・アンバー。ルイーネの第一王女で、ラシェル殿下の婚約者です。それから、……」



 エルマが言葉を切ってメオラへ視線を移すと、メオラはすぐさま跪いて、


「お初にお目にかかります。わたしはメオラと申します。ルドリア姫の侍女にございます」


 と言った。