エルマがきょとんとしたまま、ラシェルの出ていった扉を見ていると、それまでずっと黙って立っていたメオラが、「服のことよ」と指摘した。



「服? どこか変か?」



 言いながら、エルマは自分の姿を見下ろす。


それでもメオラの意図がわからず、首をかしげていると、メオラが焦れたようにエルマを指差して、


「それ、寝間着でしょ?」

 と言った。



 とたんに、エルマは額を押さえて、そうだった、とぼやいた。



 王族や貴族にとっての寝間着は、感覚的には下着にも等しいのだ。


寝る前にそれ専用の服に着替える習慣などなかったエルマにとっては、全く理解できない感情だが。



 エルマは苦々しい顔で、そばに立つメオラを見た。



 メオラの腕に抱えた豪奢な衣装は、エルマに――ルドリアのために仕立てられたものだが、エルマにはどうしても、自分にそれが似合うとは思えなかった。


メオラのほうがずっと愛らしい容姿をしているし、メオラのほうがずっと姫としての振舞い方がわかっているように、エルマは思う。



(ルドリアとそっくりなのは、メオラのほうがよかったのかもな)



 エルマは苦笑して、メオラに差し出された衣装を受け取った。