*第二章 国亡き者たちの王 1*


 ドン、と、腹に響くような大きな音がして、エルマは目を覚ました。



 今の音は何だろうと、しばらくきょろきょろと部屋を見回していると、再びドン、と音がした。



 外からだ。


 大砲の音に似ていた。

けれど、なぜ? 今は休戦中のはず。


他でもないエルマ自身が、休戦の証を演じているのだから。



 エルマは慌てて起き上がると、窓のカーテンを開いた。


それと同時に、王城前の広間の中央から、ひゅーっと音を立てて、きらきら光る何かが空へ打ち上がった。


それは空高くまで上ると、ドン、と音を立てて、ふわふわとした桃色の煙に変わる。



 それは次々に打ち上がると、空に色とりどりの煙の花を咲かせた。



 エルマは目の前のよくわからない光景に唖然とした。どうやら大砲ではないようだが、これはいったい何だろう?



 そう思ったとき、コンコン、とノックの音がした。


「ルドリア殿、起きているか?」


 扉の外から聞こえたのは、ラシェルの声だ。



「はい。どうぞ、殿下」と、エルマが答えると、ゆっくりと扉が開いて、ラシェルが現れた。


その隣には、どこか不機嫌そうな顔の、侍女の制服に身を包んだメオラもいる。

十日前、エルマたちが王城に着いたその日に、メオラはラシェルに頼んでエルマの侍女にしてもらったのだ。



――わたしを、「ルドリア王女」付きの女中にしてくださいませんか。



 ほとんど睨みつけるような目つきで、ラシェルを見てそう言ったメオラに、ラシェルは二つ返事で了承した。