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 野営地に帰った一行を真っ先に迎えたのは、例によってラグだった。



「営業許可証、持って帰ったぞ」



 言って、エルマは二枚の書状をラグに見せた。


ラグはこれ以上ないほど目を見開いて、書状の文面を食い入るように見つめた。



 そして、わらわらと寄ってきた男たちを振り返って、叫んだ。


「族長が、営業許可証をとってきたよー!」


 一拍、間を置いて、野営地に喝采が響き渡った。


皆手を叩き、抱き合って喜び、エルマを囲んで感謝や労いの言葉を投げかける。


数人の若者はほとんど跳ねるようにして、夕餉の支度をする女たちへ知らせに走っていった。

つい先程まで沈鬱な表情をしていたエルマとメオラも、この時は喜びに弾けるような笑みを顔に浮かべた。



 しばらくして、荷馬車からカームが現れた。


その途端に人だかりは割れ、皆カームに道を譲りだす。


エルマの前に立ったカームは、破顔一笑すると、エルマの肩を優しく叩いた。



「よくやった、エルマ」


 いつもは豪快な養父の、存外優しく響いたその声に、エルマは鼻の奥がつんとするのを感じた。


そんなエルマの顔を見て、カームはまたいつも通りに、豪快に笑う。



「変な顔しやがって! ……しかし、イロの野郎は、なんでエルマが出向いたときには、こうもあっさり許可証を出しやがったんだろうな。俺の娘があんまり可愛いんで、骨でも抜かれたんじゃねぇか!」



 その言葉に、野営地中にどっと笑いが起こる。


途端、エルマの顔が強張るのを見てとったメオラは、反射的に声を上げた。



「そのことなんだけど!」



 高く良く通るメオラの声に、皆笑い声を止めて、一斉にメオラを見た。