エルマにも誰にも見覚えのない青年だったが、三人はその男がどういう身分の者なのかを瞬時に判断した。


金の髪に金の瞳。

イスラ半島でそんな容姿の者といえば、王家の人間に他ならない。



 慌てて膝を折ろうとした三人を、青年は笑って制した。



「いいよいいよ、そんなことしたら目立つでしょ」



 どうやら今日はお忍びのようだ。


青年は質素な服に身を包み、目立つ金髪を隠すためかフードを被っている。



「わたしに何か?」


 エルマは尋ねた。


「いろいろあった」と言ったこの男は、おそらくエルマとラシェルが交わした「契約」のことを知っていると踏んだのだ。



 そして、エルマの推測は当たっていた。



「うん、君について行こうと思って。君やアルの民に興味があるし、監視も兼ねてね」



 だろうな、と思っていたエルマもメオラも黙って頷いたが、事情を知らないカルは怪訝そうに眉をひそめて声を上げた。



「監視って、……どういう」



「カル」


 そのカルの言葉を、エルマが遮る。



「いいから」



 強い口調で言われて、カルはまだ納得がいかないような顔をしながらも、しぶしぶ引き下がった。


それでもどこか剣呑な眼差しをしたカルに構わず、男は微笑みを浮かべたまま、エルマを指差して言った。