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 王城でレガロという男から免税特権を認める書状と、もう一枚、契約書を受け取ったエルマは、城門のわきに立ったカルを見止めて手を振った。



 その手には銀製の細長い筒が握られている。


城を出る前に、書状の保管用にラシェルが渡してくれたものだ。


エルマはそれに契約書を一枚入れ、残りの二枚を手に持った。



 カルもエルマに気づいたようで、まっすぐに駆け寄ってくる。



 エルマは無言で、手に持った書状を二枚、カルに突きつけた。



 カルは反射で一度仰け反り、そしてまじまじと書状を覗き込んだ。


その顔にみるみる高揚が浮かぶ。

それに反して、メオラの顔はみるみる沈鬱になっていった。



「営業許可証だけじゃなくて、免税特権までぶん取ってきたのか? すげえな、エルマ!」



 喜色満面で書状から目をあげたカルは、ふと、エルマとメオラが喜ばしげでないのに気づき、訝しげな顔をした。



「なんかあったのか?」



 その問いにメオラは口をつぐみ、目を伏せた。


ややあってエルマが重たげに口を開いた、そのとき。



「まあ、いろいろあってね」



 あらぬ方向からの返答に、三人ともぎょっとして振り向いた。


いつの間に現れたのだろう、三人のすぐ傍に、にこにこと微笑んだ青年が立っていた。