*終章 そして、それぞれの道へ*


「二人とも、早く来い!」



 急な坂を木々につかまりながらひょいひょいと登り、エルマは振り返って言った。



「あいつ……腹に子がいるとは思えない猿っぷりだな」



「たぶん聞こえてるよ、カル」



 珍しくはしゃいだ様子のエルマを呆れ顔で見上げたカルに、苦笑しながらラグが言う。



 セナの森の真ん中。

道のない、標のない森の中。

それでも三人の歩みに迷いはない。



 三人は、昨夜の狩りの際にラグが見つけた小高い丘の上を目指していた。



「ラグ、まだ登るのか?」



 俺はそろそろ疲れてきたぞ、と、ぼやくカルに、ラグは小さな声で「これだから年寄りは……」とつぶやく。



「うっせーよ、まだ二十三だ」と、カルがラグを睨みつけたそのとき。



「カル、ラグ、見えたぞ!」