Elma -ヴェルフェリア英雄列伝 Ⅰ-




「さて、」



 菓子を食べ終えると、カルが立ち上がる。



「そろそろ時間だ」



「ん。……行こう」



 ラグも頷いて立ち上がる。

次いで、メオラとエルマも。


いつになく沈んだ顔をしたエルマの肩をカルがぽん、ぽん、と叩いた。



「メオラとも、ラシェルたちとも、べつに今生の別れじゃねぇんだ。しみったれたのは無しにしようぜ」



「……そうだな」



 エルマは頷き、歩き出した。


コツ、コツ、と、数歩分の靴音が部屋に響いて、エルマの手が扉を開けようと伸ばされ――ふいに止まる。



 どうした、と、カルが声をかけようとした、そのとき。



 突然、エルマが勢いよく振り返った。


そして、大きく一歩踏み出す。


ひらりとエルマの緑の髪がなびいた。



「メオラ……!」


 湿った声で友の名を呼んで、エルマはメオラに抱きついた。



「メオラ、元気でな」



 エルマがラグとメオラをアルの仲間に迎え入れてから、ずっと、メオラはエルマの一番の友だった。

もう十年以上一緒にいる、唯一無二の友だ。