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「そう、そんなことがあったの」


 メオラは言って、皿の上の菓子をつまみ上げると口の中に放り込んだ。



 晴れた晩夏の昼下がり。

エルマの提案で、エルマ、メオラと、そしてラグの三人は、「王城にいる間の最後の贅沢」と称してお茶会を開いていた。

エルマが毒に倒れたあの日の仕切り直しだ。



 カルも誘ったが、用事があるから途中から参加するとのことで先に始めていたのだ。


焼き菓子とお茶をおともに、エルマはルイーネに赴いたときの一部始終を話していた。



「うん、上手くいってよかった」



「本当よ。わざわざエルマがそんな危ないことしなくてよかったのに。心配したんだからね」



 ルイーネの民が「偽ルドリア」にどれほどの怒りを持っていたかわからなかったから、演説の最中に何が起きてもおかしくはなかった。


いや、そもそもディネロがエルマをどう扱うかもわからなかったのだ。



「本当に、今思えばものすごく危険な賭けだったね」



 と、ラグが言う。