*8*


 ――キンッ!


 金属のぶつかり合う鋭い音が聞こえて、メオラは目を開けた。



 その目の先に映るのは、白い大理石の床。

頬から伝わる床の冷たさに、自分がまだ死んでいないことに気づいたが、それでもうつ伏せに倒れたメオラにはなにが起きたのかわからなかった。



 首をひねってなにがあったのか確認しようとした、そのとき。



「剣を引いてメオラを放せ、イロ」



 頭上で声がした。

耳に慣れた低い声。

最初は嫌いで、でもいつのまにか愛しく思うようになっていた、その声。



「……ラシェル……?」



 呟くと同時に、イロが押さえつけていたメオラの手を放した。



 骨が軋むほど強い力で押さえつけられていた腕は、強張ってすぐには動かせなかった。


床に手をついてゆっくりと起き上がると、メオラは顔を上げた。



「無事か、メオラ」



 金の瞳を細めて微笑み、ラシェルがかがんだ。

赤い髪がメオラの目の先で揺れる。