――我がシュタイン王国はルイーネ王国と、婚姻よりも固い友情という絆により恒久の盟約を結ぶ。私ラシェル・セルディークとルイーネ王国国王ディネロ・アンバーは互いを友として尊敬しあい、互いの国を敬愛し助け合うことを誓う。



 条約文としては、前代未聞。だがその無茶な条約文に、民は湧き立った。



 歓声の中、エルマがまた一歩、前に出た。



「わたくしはルイーネを家族に持ち、シュタインを友に持っています。わたくしが平和の架け橋となりましょう」



 その言葉に、民の歓声がまた大きくなる。



「……終わったな」



 今やシュタインもルイーネもなく一様に喜びと興奮の表情を浮かべる群衆を眺めながら、エルマが呟いた。


ラグも同じように群衆を眺めながら、小さく頷く。



「うん。……エルマは、やっぱすごいや」



「そんなこと」



「あるよ。本当に、暴動を鎮めて和平条約を結ばせてしまった」



 ラグの言葉に、エルマは微笑んで首を振った。