Elma -ヴェルフェリア英雄列伝 Ⅰ-




 昨夜、考えていた策をディネロとルドリアに話していたエルマは、そこで言葉を切った。

それからどうするの、とルドリアが尋ねると、エルマは苦い笑みを浮かべて言った。

――情に訴える、と。



「わたくしは、長らく存在を秘匿されておりました」



 今度はエルマがルドリアに代わって言う。



「理由はウィオンの迷信のためです。ウィオンでは古くから、双子が生まれると、後に生まれた方は悪魔の化身とされました。そのために実の母に疎まれたわたくしは、幼い頃に城を追放されました」



 悲しげに目を伏せながら、エルマは語る。



「……けれど、それを救ってくれたのがシュタインです。シュタインは敵国の者であるわたくしを、追放されたからには血筋は関係ないと言って城へ迎え入れてくださいました」



 今や民衆は、偽ルドリアの偽りの身の上話に真剣に耳を傾けていた。



「だから」



 先ほどまでの悲哀のこもった声とは一転、決然と顔を上げ、エルマは一歩、前に出る。