*7*

「――助けてっ!」



 甲高い悲鳴が聞こえて、ラグは振り返った。

見ると、複数人の若い男が一軒の酒屋で暴れている。

悲鳴はその酒屋から泣きながら出てきた少女のものだった。



 ラグがいるのは国境の街ミオーラだ。

ディネロと出会い、王城へ赴いてすぐに、再びこの街へ戻ってきたのだ。



 街はルイーネ王城へ赴く前よりもひどい有様だった。

街中いたるところでルイーネ人とシュタイン人が暴力沙汰になっていた。

ルイーネ人の店をシュタイン人が襲ったり、逆もあった。

目の前の酒屋の騒ぎも、その類だろう。



 どうして、こうなるんだろう。



 こうした騒ぎをもういくつも目にしてきた。

だが、見るたびに思わずにはいられなかった。

ルイーネの民も、シュタインの民も、どちらも平和を望んでいるはずなのに。



――いや、平和を望んでいるからこそ、だ。

だからこそ、それが失われようとしたとき、互いに相手のせいにし、相手への憎しみは大きくなる。