「黙れ、娘。それ以上言うな」



 低い声で言うイロに、しかしメオラは言い募る。



「長い時間がかかったって、探すことはできなかったの? 二人が幸せに、互いを支えあって国を作る未来はなかったの? ――きっとあったはずよ。それを、あなたが潰した」



「黙れ!」



 イロの怒鳴り声とともに、剣がメオラの顔のすぐ横に振り下ろされた。


それはメオラの長い髪を断ち、その銀の剣身に恐怖に引きつったメオラの顔を映し出す。



「言いたいことはそれだけか」



 床に刺さった剣を引き抜き、再び振りかぶりながらイロは言う。


いよいよか、と思うと、不思議と体の震えが止まった。



 そうね、じゃあ、死ぬ前にこれだけははっきり言ってあげるわ。

と、メオラは言った。


諦めの境地に達したその声は、もう震えていない。



「あなたは間違っていたわ、イロ」



 言い終えると同時に、ヒュッと空気を切る音がメオラの耳に届いた。


まっすぐ自分に振り下ろされる銀色を最後に視界にとらえ、メオラはそっと、目を閉じた。