ちょうど階段を上ってきたフシルが、小走りでメオラのほうへ駆け寄ってくるところだった。



「メオラ殿、今から殿下のお部屋へ?」



 追いついたフシルの言葉に、メオラは「はい」と頷く。



「一応はルドリア姫付きの侍女なのですから、メオラ殿お一人で城内をうろつくのは危険です。同行しましょう」



「いえ、そんな」



「いいんです。ちょうど暇ですから」



 そう言って微笑み、フシルはメオラの隣に並んで歩き出す。

言っても聞かないか、と諦めて、メオラは素直に「ありがとうございます」と頭を下げた。



 何を話せばいいだろう。

そう考えて、メオラはふと、そういえばフシルと二人で話すことは一度もなかったな、と思い至る。

それは、二人とも常に主人のそばについていたからで。



 今はどちらもいない。エルマも、――リヒターも。



「ときに、メオラ殿」



 フシルが唐突に言った。