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 窓の外を見ると、空は暗い雲に覆われていた。



 今にも雨が降り出しそうな空はいかにも不吉で、メオラは窓の向こう遥か南にいる友と兄を思う。



 二人がシュタイン王城を出てから、三日になる。

うまくいけば三、四日で帰るとエルマは言っていたが、今頃どうしているだろうか。



 ため息を一つこぼして、メオラは窓のそばから離れた。

日の出ているときはまだまだ暑いが、朝晩や雨の日はすこし肌寒くなってきた。

季節は夏から秋に移ろうとしていて、王城に来てもうそれほど経つのか、と、ぼんやり思う。



 両の手に持ったお盆には、もうとっくに冷めたラシェルの食事が乗っている。

王族の食事は毒味やらなにやらで時間がかかって、食べる人のところに届く頃にはもう冷めていることが多い。

だから必要以上に急がなくていいことが侍女にとってはありがたかったりするが、食べる張本人はすこし可哀想だ。



 もう歩きなれた道順を辿ってラシェルの部屋へ食事を運んでいると、後ろから「あ、」と声がして、メオラは振り返った。