とたん、エルマとラグの二人の顔が一瞬にして真っ赤になる。
それを見て、ディネロはこらえきれずに吹き出した。
「見ていて面白いな、おまえたちは。……なんだか、安心した」
ひとしきり声を上げて笑った後、目尻の涙を拭いながら、ディネロは言った。
「エルマ、と呼ばれているんだな」
唐突な言葉に、エルマは戸惑いながら頷く。
「はい。拾っていただいた父に付けてもらった名です」
「そうか。――では、エルマ」
妙に改まった態度のディネロに、エルマは自然と背筋が伸びるのを感じた。
――何か、大切なことを言われる気がしたのだ。
「おまえを捨てた張本人がこんなことを言うのは片腹痛いが……幸せそうで、本当によかった。生きていてくれて、ありがとう」
しみじみと言われた言葉は、暖かな温度を持ってエルマの胸に染み入る。
たしかな脈動をもって。
エルマはディネロに会ってから初めて、紅い瞳を細めて柔らかく笑った。
「はい。――兄上」