Elma -ヴェルフェリア英雄列伝 Ⅰ-




「誰から?」



 エルマが問うと、ディネロは沈黙する。その瞳が迷うように揺れた。



 そして、長い長い沈黙の後。



「……母上、からだ」



 呟くように、低くそう言った。


 それを聞いてエルマは納得した。

以前、クランドル領でカームに言われたことを思い出す。

イスラに残る古い慣習――双子が生まれたら、後から生まれた方が悪魔だ、という。



 ディネロの母、つまりルイーネの国母は、島国ウィオンの出身だ。

辺境の島国の、それも古い伝統や格式を固く守っている王族であれば、そんな迷信を未だに信じていてもおかしくはない。



ならば、自分の生んだ悪魔の子が、まだ生きていると知ればどうするか、想像に難くない。



(――こうなると、もう疑いようもないな)



 エルマはルイーネの王女で、アンバー王家の次女で、ディネロの妹であり、ルドリアの双子の妹。



それはもう、ごまかしようのない事実なのだろう。